配当利回りの計算と落とし穴|17銘柄で検証

配当利回りの計算と落とし穴 17銘柄で検証 マネーリテラシー基礎

保有する日本株17銘柄の配当利回りを2026年8月28日終値で計算し直すと、表面で4%を超えたのは5銘柄、税引後で4%を超えたのは0銘柄でした。税・株式分割・決算期という3つの落とし穴を実測で検証します。

配当利回りは3種類あり、答えが違う

配当利回りという言葉はひとつでも、分母と分子の取り方で3通りの数字が出ます。証券会社の銘柄画面に出ているのは、たいてい一番上の「表面利回り」です。

配当利回りの3つの計算方法(運営者作成)
呼び方 計算式 何が分かるか
表面利回り 年間配当 ÷ 現在の株価 今この株価で買った人の利回り。銘柄間の比較に使う
税引後利回り 年間配当 × 0.79685 ÷ 現在の株価 実際に手元に残る金額ベースの利回り
取得利回り 年間配当 ÷ 自分の取得単価 すでに買った自分の投下資金に対する利回り

0.79685という係数は、上場株式の配当にかかる源泉徴収税率20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)を差し引いた残りです。特定口座で受け取ると、この税率が自動的に引かれた金額が入金されます。

保有17銘柄で計算した実測値

年間配当は各社が直近12か月に実際に支払った1株あたり配当の合計、株価は2026年8月28日終値を使いました。予想配当ではなく支払済みの実績です。

保有17銘柄の配当利回り:表面と税引後の差(2026年8月28日終値)
図:保有17銘柄の配当利回り:表面と税引後の差(2026年8月28日終値)(出典:Yahoo Financeデータより運営者作成)
保有17銘柄の配当利回り(株価は2026年8月28日終値、配当は直近12か月の実績。Yahoo Financeデータより運営者算出)
コード 銘柄 株価(円) 年間配当(円) 表面利回り 税引後利回り
7820 ニホンフラッシュ 722.0 36.0 4.99% 3.97%
8898 センチュリー21 1,138.0 53.0 4.66% 3.71%
9986 蔵王産業 2,493.0 105.0 4.21% 3.36%
6345 アイチコーポレーション 1,441.0 60.0 4.16% 3.32%
3834 朝日ネット 623.0 25.0 4.01% 3.20%
2914 JT 7,001.0 266.0 3.80% 3.03%
5401 日本製鉄 671.0 24.0 3.58% 2.85%
7751 キヤノン 4,689.0 160.0 3.41% 2.72%
8593 三菱HCキャピタル 1,392.5 46.0 3.30% 2.63%
1605 INPEX 3,856.0 106.0 2.75% 2.19%
8591 オリックス 6,345.0 156.1 2.46% 1.96%
6113 アマダ 2,595.0 62.0 2.39% 1.90%
8306 三菱UFJ FG 3,608.0 86.0 2.38% 1.90%
8316 三井住友FG 6,794.0 157.0 2.31% 1.84%
8002 丸紅 4,908.0 107.5 2.19% 1.75%
8053 住友商事 1,750.0 37.5 2.14% 1.71%
7272 ヤマハ発動機 1,906.5 35.0 1.84% 1.46%

17銘柄の単純平均は表面3.21%、税引後2.56%でした。差は0.65ポイントです。数字にすると小さく見えますが、割合でいえば利回りの5分の1が消えています。

落とし穴その1:税引後で並べ直すと4%超が消える

表面利回りで4%を超えたのは、ニホンフラッシュ4.99%、センチュリー21 4.66%、蔵王産業4.21%、アイチコーポレーション4.16%、朝日ネット4.01%の5銘柄です。この5銘柄に20.315%を掛けると、それぞれ3.97%、3.71%、3.36%、3.32%、3.20%になります。税引後で4%以上に残った銘柄はゼロでした。

「利回り4%以上の高配当株」という条件でスクリーニングをかけると、手元に残る利回りが4%に届く銘柄は実質的にひとつも引っかかりません。表面で5%を確保して、ようやく税引後4%です。

私の実際の入金額でも確認できます。2026年6月3日にオリックス100株分として振り込まれたのは4,969円でした。1株62.34円の期末配当なので税引前は6,234円、差額の1,265円が源泉徴収されています。この1回だけで、ちょっとした外食1回分が消えている計算です。

NISA口座で受け取れば国内課税分は非課税になるため、この0.65ポイントの差は生じません。総合課税と申告分離課税のどちらを選ぶかでも手取りは変わります。課税方式の選び方は配当金の税金|総合課税と分離課税の選び方で計算しました。

落とし穴その2:株式分割をまたぐと利回りが壊れる

今回いちばん驚いたのはここです。最初に機械的に計算したとき、日本製鉄の表面利回りは10.64%と表示されました。株価671円に対して年間配当72円という計算です。日本株で10%超の利回りはまず出ません。

原因を追うと、日本製鉄は2025年9月29日に1株を5株にする株式分割を実施していました。分割前の2025年9月末に権利が確定した1株配当60円と、分割後の2026年3月末に確定した12円が、そのまま足し算されていたのです。60円は分割前の1株に対する金額なので、分割後に換算すれば12円です。正しく揃えると年間24円、表面利回りは3.58%になります。

日本製鉄の1株配当(2025年9月29日の1対5分割をまたぐ期間、Yahoo Financeデータより運営者算出)
権利確定 データ上の1株配当 分割後換算
2025年9月(中間) 60円 12円
2026年3月(期末) 12円 12円
年間合計 72円(利回り10.64%) 24円(利回り3.58%)

同じ17銘柄のうち、住友商事も2026年6月に1対4の分割をしていますが、こちらは分割前の配当が正しく調整されていました。つまりデータ提供元が全銘柄を一律に処理しているわけではありません。分割直後の銘柄で異常に高い利回りが出たら、まず分割比率で割ってみるのが早いです。

異常値かどうかの判定はそれほど難しくありません。日本株の配当利回りは、業績が落ち込んだ局面を除けばおおむね1〜6%の範囲に収まります。そこから明らかに外れた数字は、たいてい計算する側の問題です。

落とし穴その3:過去12か月は、これからの12か月ではない

ここまで使ってきた利回りは、すべて「支払済みの配当」を分子にしています。予想配当ではありません。では過去の実績はどれくらい将来の目安になるのか、17銘柄の2016年から2025年までの年間配当を並べて数えました。

2016〜2025年に経験した最大の減配率(17銘柄中13銘柄が減配を経験)
図:2016〜2025年に経験した最大の減配率(17銘柄中13銘柄が減配を経験)(出典:Yahoo Financeデータより運営者作成)

10年間で一度も年間配当を減らさなかったのは、アイチコーポレーション、朝日ネット、三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループの4銘柄だけです。残る13銘柄は、いずれかの年で前年を下回っています。

  • キヤノンは2020年に年間配当を50.0%減らしました。17銘柄で最大の減配です。
  • INPEXの最大減配は46.7%。原油価格に業績が連動するため、市況次第で配当も動きます。
  • 日本製鉄は37.5%、ヤマハ発動機は33.3%の減配を経験しています。
  • アマダと蔵王産業は減配の回数が4回と最も多い一方、幅は20%程度に収まっていました。
  • 下げ幅が小さかったのは三菱HCキャピタルの4.7%です。

減配の回数と減配の深さは別物だという点は、数えてみて初めて腑に落ちました。アマダのように4回減らしても幅が浅い銘柄と、キヤノンのように回数は1回でも半分にする銘柄では、配当収入の設計への影響がまったく違います。表面利回りだけを見ていると、この違いは見えません。配当を支える余力を見る指標としては配当性向が使えます。判断の手順は配当性向の見方|高すぎる配当の危険サインに書きました。

落とし穴その4:決算期が違うと「12か月」の中身が違う

17銘柄のうち13銘柄は3月期決算で、9月末と3月末に権利が確定します。残る4銘柄、キヤノン・INPEX・JT・ヤマハ発動機は12月期決算で、6月末と12月末が権利日です。

直近12か月という同じ言葉でも、3月期の銘柄では2025年度の中間と期末が揃った1事業年度分になりますが、12月期の銘柄では2025年度の期末と2026年度の中間という、異なる年度をまたいだ組み合わせになります。増配や減配の直後は、この違いだけで利回りが上下します。

JTがその例です。2025年12月権利分が130円、2026年6月権利分が136円で、直近12か月では266円になりました。2025年の暦年合計は234円だったので、13.7%多い数字を分子に使っていることになります。同じ銘柄でも、どの12か月を切り取るかで利回りは3.80%にも3.34%にもなります。

落とし穴その5:株価が上がると表面利回りは下がる

日経平均株価は2026年8月27日時点で66,131円と、1年前から54.4%上昇しました。為替もドル円159円台まで円安が進み、輸出企業の業績を押し上げています。相場が上がれば配当も増えやすいのですが、株価のほうが速く上がると表面利回りは下がります。

手元の数字で見ると差は歴然でした。17銘柄の合計で、取得額285万3,700円に対して評価額は734万5,500円、年間配当は20万4,460円です。現在の評価額に対する表面利回りは2.78%ですが、自分が払った取得額に対する取得利回りは7.16%、税引後でも5.71%あります。

この2.78%と7.16%は、どちらも正しい数字です。ただし意味が違います。これから買う人が受け取れるのは2.78%であって、7.16%ではありません。逆に、すでに保有している側が「利回りが2.78%まで下がったから売る」と考えるのは、投下資金に対して7.16%が入り続けている事実を見落とすことになります。私は後者の見方を採っています。

ちなみに投資信託には、この比較そのものが当てはまりません。全世界株式(オルカン)やS&P500連動ファンドの多くは分配金を出さず、配当を内部で再投資しています。分配金利回りは0%ですが、受け取っていないわけではなく基準価額に含まれています。米国株ETFのように分配金を出す商品と投資信託を利回りで並べると、比較になりません。

運営者YKが5年分の入金明細で確かめたこと

投資歴20年、現在は個別株17銘柄と投資信託を長期保有しています。配当については2021年8月から入金の全記録を残していて、2026年6月時点で104回、税引後の累計は53万6,960円になりました。

暦年で見ると2023年12万9,251円、2024年12万3,925円、2025年14万4,138円です。2024年に前年を下回っているのは、保有銘柄が減配したからではなく、みずほフィナンシャルグループを売却して配当の出どころが減ったためでした。この理由に自分で気づくまで、しばらく減配を疑っていました。

2025年の14万4,138円は税引後の実額です。税引前に換算するとおよそ18万1,000円で、差の約3万7,000円が源泉徴収されています。年間で新NISAのつみたて投資枠を2か月分埋められる金額です。この数字を出してから、私は利回りを比べるときに必ず0.79685を掛けるようにしました。

もうひとつ、買った当時の判断について正直に書いておきます。保有銘柄のうち何本かは、購入時に表面利回りの高さだけを根拠に選びました。そのうちのINPEXは、その後に46.7%の減配を経験しています。当時の私は原油価格と配当の連動を確かめていませんでした。セクターの偏りも含めた見直しは高配当ポートフォリオの組み方|セクター分散の実践にまとめています。

まとめ

17銘柄を実際に計算して分かったことを整理します。

  • 表面利回りに0.79685を掛ける。今回は4%超が5銘柄からゼロになりました。
  • 分割直後の銘柄は、異常な高利回りを疑う。
  • 過去12か月の実績は将来の保証ではない。10年で13銘柄が減配を経験していました。
  • 取得利回りと表面利回りは別々に持つ。保有継続の判断には取得利回り、新規購入の判断には表面利回りを使います。

配当利回りは単純な割り算ですが、分母と分子をどこから持ってくるかで答えが変わります。証券サイトの数字を出発点にしつつ、税と分割と決算期の3点だけは自分で確かめる価値があると判断しました。

この記事で使ったデータ

  • 株価・1株配当・株式分割:Yahoo Finance(2026年8月28日終値時点)
  • 受取配当の実額:運営者の証券口座入金明細(2021年8月〜2026年6月、104件)
  • 配当課税の税率:国税庁「配当金を受け取ったとき(配当所得)」

利回りが高く見える時期は株価が下がっている時期でもあります。その関係を実データで追ったのが高配当株の買い時|利回りと株価の逆相関です。

本記事は特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。数値は執筆時点のデータに基づく運営者の算出であり、将来の配当を保証するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。詳細は免責事項をご覧ください。

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