NISA売却枠の復活|戻るのは簿価、年360万円は増えない

NISA 売却枠の復活 簿価 年間投資枠 マネーリテラシー基礎

NISAで売った分の非課税枠は、翌年に戻ります。ただし戻るのは売った金額ではなく、買ったときの金額(簿価)です。私の成長投資枠のオルカンは時価679.8万円ですが、全部売っても翌年に戻る枠は520.0万円です。

もうひとつ見落としやすいのは、年間360万円の投資枠は売っても増えないことです。毎年の枠を使い切っている人にとって、戻った枠は「すぐ使える枠」にはなりません。

公開:2026年10月15日(評価額は2026年6月11日の基準価額で計算)


枠が戻るルールは3つだけ

2024年からのNISAには、生涯で非課税で持てる上限(非課税保有限度額)が1,800万円あり、そのうち成長投資枠で使えるのは1,200万円までです。この上限は時価ではなく、簿価、つまり買い付けたときの金額で管理されています。

金融庁の説明では、商品を売った場合、翌年以降に売った商品の簿価の分だけ枠が復活し、再利用できます。成長投資枠の商品を売れば、成長投資枠の1,200万円の内側にも同じだけ空きができます。

一方で、年間投資枠(つみたて投資枠120万円・成長投資枠240万円、合計360万円)は、売っても戻りません。復活した生涯枠を使うときも、その年の年間投資枠の範囲内でしか買えないということです。

売った年のうちに枠を戻す仕組みは税制改正の要望として議論されてきましたが、2026年10月時点の金融庁の制度説明は「翌年以降」のままです。NISAの全体像は【2026年版】NISAとは?2026年改正の最新ポイントで整理しています。

私のNISA口座で計算すると

図:運営者のNISA生涯枠の使用状況(簿価・2026年6月11日時点)と、成長投資枠のオルカンを全部売った翌年の状態。戻るのは時価ではなく簿価の520万円(出典:運営者の証券口座データより作成)
図:図:運営者のNISA生涯枠の使用状況(簿価・2026年6月11日時点)と、成長投資枠のオルカンを全部売った翌年の状態。戻るのは時価ではなく簿価の520万円(出典:運営者の証券口座データより作成)(出典:Yahoo Financeデータより運営者作成)
運営者のNISA口座の簿価と時価(2026年6月11日の基準価額。運営者の証券口座データより算出)
口座 商品 簿価(取得金額) 時価 損益率
成長投資枠 eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) 520万0,173円 679万8,258円 +30.7%
つみたて投資枠 eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) 300万0,081円 402万3,726円 +34.1%
合計 — 820万0,254円 1,082万1,984円 +32.0%

私が使っている生涯枠は、簿価で820.0万円です。1,800万円の45.6%で、残りは980.0万円あります。時価で見ると1,082.2万円になっていますが、枠の計算に使うのは簿価のほうなので、値上がりした分が生涯枠を圧迫することはありません。

仮に成長投資枠のオルカンを全部売ると、受け取る代金は679.8万円です。このうち値上がり益の159.8万円には税金がかかりません。課税口座で同じ利益が出ていれば、20.315%で約32.5万円が差し引かれる計算です。そして翌年に戻る生涯枠は、売却代金の679.8万円ではなく、簿価の520.0万円です。グラフの下の段のように、空きは1,500万円に広がります。

値上がりした商品ほど、売ったときの代金と戻る枠の差は大きくなります。逆に、値下がりした商品を売っても戻るのは簿価なので、枠の上では損をしません。ただしNISA口座の損失は課税口座の利益と相殺できないので、税金の面では不利です。この点はNISAは損益通算できない|知っておくべき弱点で計算しました。

戻った枠を使い切るのに、1年余計にかかる

図:年360万円のペースで買い続けた場合のNISA簿価残高。売却しなければ2029年に上限に届き、2026年中に成長投資枠を全部売ると2030年までずれ込む(運営者試算。将来の成果を保証するものではありません)
図:図:年360万円のペースで買い続けた場合のNISA簿価残高。売却しなければ2029年に上限に届き、2026年中に成長投資枠を全部売ると2030年までずれ込む(運営者試算。将来の成果を保証するものではありません)(出典:Yahoo Financeデータより運営者作成)

年間投資枠のほうが先に効いてくる、という点を試算で確かめました。前提は、2026年7月以降も年360万円のペースで買い続けることです。

売却しない場合、2026年末の簿価残高は1,000万円で、2029年に上限の1,800万円に届きます。2026年中に成長投資枠を全部売ると、2026年末の簿価残高は480万円まで下がり、上限に届くのは2030年です。戻った520万円の枠を埋めるには、年360万円のペースで約1年半かかり、そのぶん上限到達が1年ずれ込みます。

この間、売却代金の679.8万円はNISAの外に置くしかありません。年間投資枠をすでに毎年の積立で使っているので、代金をNISAに入れ直す余地がないからです。課税口座で運用すれば、その後の値上がり益には税金がかかります。枠は戻っても、非課税で運用できたはずの期間は戻りません。

枠の復活が役に立つのは、積立を終えた後

逆に言えば、枠の復活が意味を持つのは、年間投資枠を使い切っていない人です。生涯枠を埋め終えて積立を止めた人や、取り崩しの時期に入った人は、売って空いた枠を翌年の年間投資枠の範囲で使い直せます。

たとえば1,800万円を埋め終えた後に、値下がりした商品を売って別の商品に乗り換える場合です。売った翌年には簿価分の空きができるので、年間360万円の範囲で買い直せます。乗り換えたい金額が大きければ、数年に分けることになります。

個別株を成長投資枠で回転売買する使い方は、この仕組みとは相性がよくありません。売った枠は翌年まで戻らず、その年の年間投資枠を食うので、売買を重ねるほど、その年に新しく買える金額が減っていきます。成長投資枠で個別株を買う場合の手順と注意点は新NISA成長投資枠で高配当株を買う手順にまとめています。

私がNISAの中身を売らない理由

私はNISAの2つの枠をどちらもオルカンだけで使っていて、日本の高配当株17銘柄は課税口座で持っています。NISAの中で売買をしないと決めているのは、ここまでの計算どおり、売っても年間投資枠は増えず、戻る枠は簿価だけだからです。

成長投資枠のオルカンは+30.7%の含み益になっていますが、利益確定のために売るつもりはありません。生涯枠の残り980万円を年間投資枠の範囲で埋めていくほうが、非課税で運用できる金額と期間をどちらも大きくできます。

枠は戻っても、非課税で育てる時間は戻らない

NISAの売却枠の復活は、翌年・簿価・年間投資枠の内側、という3つの条件つきです。積立を続けている間に売れば、戻った枠を使い切るまでの時間がそのまま延びます。売るかどうかは、利益の額よりも、自分がまだ年間投資枠を使い切っているかどうかで考えたほうが判断を誤りにくいと私は見ています。

制度の確認先と計算の前提

  • NISAの制度:金融庁「新しいNISA」(非課税保有限度額、売却時の枠の復活、年間投資枠)
  • 簿価・時価:運営者の証券口座の保有口数と平均取得単価、2026年6月11日の基準価額
  • 課税口座の税率:所得税・復興特別所得税・住民税の合計20.315%
  • 試算:2026年7月以降も年360万円(つみたて投資枠120万円・成長投資枠240万円)を買い続け、売却代金はNISAに戻さない前提

本記事は特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。制度は改正される可能性があるため、最新の情報は金融庁や各証券会社の案内でご確認ください。詳細は免責事項をご覧ください。

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