オルカン(eMAXIS Slim全世界株式)は設定以来、分配金を1円も出していません。損をしている気がするかもしれませんが、実測すると逆でした。同じ指数に連動する米国ETFで10年分を検証します。
分配金を出さないファンドは損なのか
オルカンが連動するMSCI ACWIには、米国上場のETF「ACWI」という商品もあります。中身はほぼ同じ指数ですが、こちらは6月と12月の年2回、分配金を出します。片方は分配金なし、片方は分配金あり。この違いが10年でどれだけの差になるかを測りました。

| ケース | 10年リターン |
|---|---|
| 分配金をすべて再投資した場合 | +227.0% |
| 分配金を受け取って使ってしまった場合(価格のみ) | +171.7% |
| 再投資による上乗せ | +55.3pt |
10年のリターン+227.0%のうち、55.3ポイント分、割合にして24%が分配金の再投資によるものでした。この期間にACWIが出した分配金は22回・合計17.00ドルで、価格に対する年平均の分配利回りは約1.83%です。
1回あたり0.77ドルの入金は、受け取った瞬間はほとんど意味のない金額に見えます。それが10年で全体の4分の1を占めるという結果でした。
再投資には税金がかかる|11.2ポイントの差
ここからが本題です。分配金を受け取ると、その時点で課税されます。日本の個人投資家の場合、税率は20.315%です。
受け取った分配金から税金を引いた残りだけを再投資したと仮定すると、上乗せ分は+55.3ポイントから+44.1ポイントに減ります。差は11.2ポイントです。
| 条件 | 再投資による上乗せ |
|---|---|
| 分配金が非課税のまま再投資される | +55.3pt |
| 分配金に20.315%課税されてから再投資 | +44.1pt |
| 課税で失われる分 | -11.2pt |
オルカンのような分配金を出さない投資信託では、この11.2ポイントが発生しません。ファンドの内部で受け取った配当をそのまま再投資に回すため、投資家の手元では課税イベントが起きないからです。基準価額が上がる形で反映されます。
これは「税金がかからない」という意味ではなく、売却するまで課税が先送りされる(課税繰延)という意味です。最終的に売るときには利益全体に課税されます。それでも、課税されなかった分が運用され続ける期間が長いほど有利に働きます。
オルカンの分配金はいつ出るのか
結論から書くと、決算は毎年4月にありますが、分配金が出る予定はありません。
オルカンの決算は年1回・4月です。ここを「決算があるなら分配金も出るはず」と読むと話が合わなくなります。決算では分配可能な額を計算しますが、その額を投資家に払い出すか、ファンドの中に残して運用を続けるかは運用会社の方針で決まります。オルカンは後者を選んでいます。
2018年10月の設定から現在まで、分配実績は0円です。8年近く一度も出していません。目論見書でも収益の分配を抑制する方針が示されており、今後出る前提で考えないほうがよいでしょう。
「いつ出るのか」という問いへの答えは、「決算は毎年4月にあるが、出さない設計になっている」になります。
再投資はいつ行われるのか
投資家が何かをするタイミングはありません。再投資の申込も、受取か再投資かの選択も不要です。ファンドが持っている約47か国の株式から配当が入るたびに、その中で買い付けに回されます。
比較として、同じMSCI ACWIに連動する米国上場ETF「ACWI」の分配タイミングを実測しました。2016年8月24日から2026年8月24日までの10年間で、分配は22回。支払われた月は6月と12月だけで、年2回のペースです。合計は1株あたり17.00ドルでした。
構成銘柄の配当そのものは通年で発生しています。ETFはそれを半年ごとにまとめて払い出し、オルカンは払い出さずに買い付けへ回し続ける——同じ指数でも、投資家から見えるかたちがここで分かれます。オルカンの基準価額には、その分が日々含まれています。
「分配金がないと現金が入らない」という指摘について
分配金を出さないファンドの弱点として、定期的な現金収入がないことがよく挙げられます。これは事実です。取り崩すには自分で売却する必要があります。
ただし売却する場合も、値上がり分にのみ課税されます。100万円が150万円になったファンドを10万円分売れば、課税対象は10万円全額ではなく、そのうちの利益部分(約3.3万円)だけです。分配金として10万円を受け取ると全額が課税対象になるのとは扱いが違います。
資産形成の途中で現金が必要ないなら分配金なしが有利、取り崩し期に入っているなら定期的な入金がある商品にも意味がある——判断が割れるのはこの点だと私は見ています。
それでも分配金が欲しい場合の選択肢
同じMSCI ACWIに連動しながら分配金を出す商品もあります。東証に上場している「MAXIS全世界株式ETF」(銘柄コード2559)です。連動対象はオルカンと同じ指数で、こちらは分配金を出します。

| 年 | 年間分配金 | 分配回数 |
|---|---|---|
| 2022年 | 22.2円 | 2回 |
| 2023年 | 27.4円 | 2回 |
| 2024年 | 30.2円 | 2回 |
| 2025年 | 32.4円 | 2回 |
| 2026年(6月まで) | 19.3円 | 1回 |
分配は6月と12月の年2回です。直近12か月の分配金は34.0円、2026年9月3日の終値2,970円に対する利回りは1.14%でした。分配金は2022年の22.2円から2025年の32.4円へ増えています。
同じ指数に連動していて、片方は分配金0円、片方は年34円。中身が同じでも受け取り方が違うだけです。ただし2559から分配金を受け取れば、そのたびに20.315%が引かれます。前の章で見た11.2ポイントの差が、そのまま効いてきます。
現金が必要ない時期に2559を選ぶ理由は、私には見当たりませんでした。逆に取り崩し期に入っていて、売却の判断を毎回したくないなら、自動で入金される仕組みには意味があります。どちらが正しいかではなく、どの局面にいるかで決まる話だと判断しました。
運営者YKの視点|私は投信から分配金を1円も受け取っていない
私は投資歴20年で、総資産は約6,319万円です。うち投資信託が3,611万円と過半を占めており、内訳はSBI・V・S&P500インデックス・ファンドとオルカン(3口座)です。
2021年8月から記録している受取配当は104回・税引後53万6,960円ありますが、このすべてが日本の個別株からのものです。投資信託から受け取った分配金は0円です。
| ファンド | 口座 | 評価損益率 |
|---|---|---|
| SBI・V・S&P500インデックス・ファンド | 特定 | +148.6% |
| eMAXIS Slim 全世界株式(オルカン) | NISAつみたて | +34.1% |
| eMAXIS Slim 全世界株式(オルカン) | NISA成長 | +30.7% |
| eMAXIS Slim 全世界株式(オルカン) | 特定 | +13.0% |
SBI・V・S&P500の+148.6%は、取得額949万円が評価額2,360万円になったということです。この間に分配金は一度も受け取っておらず、税金も一度も払っていません。もし同じ運用を分配金ありのETFでやっていたら、10年で11.2ポイント相当を税金として先に払っていた計算になります。
一方で、日本株17銘柄からは配当を受け取っています。こちらは受け取るたびに課税されていますが、それでも保有を続けているのは、株価と無関係に確定する入金が精神的な支えになるからです。効率だけを取るなら投信、続けやすさを取るなら配当——私は両方を別々の目的で持っています。
まとめ
- MSCI ACWI連動ETFの10年リターン+227.0%のうち、55.3ポイント(24%)が分配金の再投資分でした
- 分配金に20.315%課税されると、上乗せは44.1ポイントまで減る。差は11.2ポイント
- オルカンが分配金を出さないのは、この課税イベントを発生させないため。ただし非課税ではなく繰延です
- 取り崩し期には定期入金のある商品にも意味がある
投資信託の中身をもっと確認したい方へ
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本記事は情報提供を目的としたもので、特定の商品の売買を推奨するものではありません。税率や制度は改正される場合があります。投資判断はご自身の責任でお願いします。詳細は免責事項をご確認ください。
(データは2026年8月24日時点。投資信託の基準価額は2026年6月11日時点です。)


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