三菱商事の配当分析|商社株の累進配当を読む

三菱商事の配当分析 累進配当10期連続増配 投資テーマ解説

三菱商事は「累進配当」を掲げる代表的な商社株です。実際に何年間減配していないのか、同じ商社でも配当の安定度に差はあるのか。私が400株を実際に保有する住友商事の実データと並べて、11年分の配当実績で検証します。

累進配当とは何か|三菱商事の11年の実績

累進配当とは「減配せず、維持または増配のみを行う」という配当方針です。方針を掲げること自体は誰にでもできるので、実績で確認します。以下は権利落ち実績から集計した年間配当金です。三菱商事は3月決算のため、9月末(中間)と3月末(期末)の権利確定分を会計年度ごとに合算しています。

三菱商事の年間配当金(1株あたり・会計年度ベース)の10年推移。2017年3月期の26.7円から2026年3月期の110円まで、一度も減配せず約4.1倍に増加した
図:三菱商事の年間配当金(1株あたり・会計年度ベース)の推移。一度も減配せず増加を続けている(出典:Yahoo Financeの配当データより運営者集計(会計年度は3月期決算ベース))
三菱商事と住友商事の年間配当金の推移(株式分割調整後・1株あたり。出典:権利落ち実績(Yahoo Finance)より運営者集計、3月期決算ベース)
会計年度 三菱商事 前期比 住友商事 前期比
2016年3月期 16.7円 — 12.5円 —
2017年3月期 26.7円 +59.9% 12.5円 0.0%
2018年3月期 36.7円 +37.5% 15.5円 +24.0%
2019年3月期 41.7円 +13.6% 18.8円 +21.3%
2020年3月期 44.0円 +5.5% 20.0円 +6.4%
2021年3月期 44.7円 +1.6% 17.5円 -12.5%
2022年3月期 50.0円 +11.9% 27.5円 +57.1%
2023年3月期 60.0円 +20.0% 28.8円 +4.7%
2024年3月期 70.0円 +16.7% 31.2円 +8.3%
2025年3月期 100.0円 +42.9% 32.5円 +4.2%
2026年3月期 110.0円 +10.0% 37.5円 +15.4%

三菱商事は2016年3月期の16.7円から2026年3月期の110円まで、11期にわたって一度も前期を下回っていません。6.6倍への増配です。数値は複数回の株式分割を反映した調整後の金額で、実際に発表された1株配当額とは異なります。

同じ商社でも差がある|保有する住友商事との比較

「商社株=累進配当」というイメージが独り歩きしがちですが、上の表を見ると差は明確です。私は住友商事を400株保有しているので、同じ局面での違いを確認しました。

コロナ禍で業績が悪化した2021年3月期、三菱商事は配当を維持・微増させた一方、私が実際に保有する住友商事は12.5%の減配となった
図:2021年3月期、三菱商事は配当を微増させた一方、私が保有する住友商事は12.5%の減配となった(出典:Yahoo Financeの配当データより運営者集計)

2021年3月期、三菱商事が+1.6%とわずかながら増配した一方、住友商事は20.0円から17.5円へ12.5%の減配となりました。資源価格の急落と新型コロナウイルスの影響で商社各社の業績が悪化した年です。

住友商事もその後は増配基調を取り戻し、2026年3月期には37.5円と減配前の1.9倍まで回復しています。ただし「一度も減配していない」という記録は途切れています。方針として累進配当を明示しているかどうかは、危機時の配当の底堅さに実際の差として表れます。

累進配当のコスト|配当性向で見ると三菱商事のほうが高い

累進配当は投資家にとって魅力的ですが、企業側には「利益が減っても配当を減らせない」という制約になります。この制約の重さは配当性向に表れます。

三菱商事と住友商事の株価指標の比較(2026年8月19日終値。1株利益は直近実績、配当は会社予想。出典:Yahoo Financeより運営者作成)
項目 三菱商事(8058) 住友商事(8053)
株価 4,648円 1,678円
1株利益(実績) 209.62円 124.68円
予想年間配当 125円 40円
配当性向 59.6% 32.1%
予想配当利回り 2.69% 2.38%
PER 22.4倍 13.6倍
PBR 1.79倍 1.70倍

ここは直感に反する結果でした。累進配当を掲げる三菱商事の配当性向は59.6%で、過去に減配した住友商事の32.1%のほぼ2倍です。利益に対する配当の重さで見れば、三菱商事のほうが余裕は小さいことになります。

これは累進配当という方針の構造そのものです。増配を続ける以上、利益が伸びない年でも配当は下げられないため、配当性向は時間とともに切り上がっていきます。「累進配当だから安全」ではなく、累進配当だからこそ配当性向の上昇を監視する必要があると考えられます。配当性向の危険水域については配当性向の見方の記事で整理しています。

もっとも、この5年間の株価は両社ともほぼ同じ軌跡をたどりました。2021年8月からの5年間で三菱商事は890円から4,648円へ+422.2%、住友商事は302円から1,678円へ+455.0%、同期間の日経平均は+141.8%です(いずれも株式分割調整後)。累進配当の有無が、この局面で株価のリターン差になったとは言えません。

住友商事を保有していて感じること

私は住友商事を400株保有していますが、三菱商事は保有していません。実際の数字は次のとおりです。

運営者保有分の住友商事の実績(取得単価は株式分割調整後の実約定価格、配当は税引後受取額の実績。2026年8月19日終値基準)
項目 金額・数値
取得単価・株数 463円 × 400株(取得額185,200円)
評価額 671,200円(+262.4%)
累計受取配当(税引後・7回) 35,066円
取得額に対する配当利回り(YOC) 18.9%

今回の集計で、自分の保有銘柄が2021年3月期に減配していた事実を数字で再確認しました。それでも売らずに持ち続けているのは、減配後の増配ペースのほうが速かったからです。減配前の20.0円に対し、現在は37.5円と1.9倍になっています。

1回の減配で銘柄を見限るのではなく、その後の回復力まで含めて評価する——これが実際に保有を続けている立場からの判断です。一方で、次に業績が悪化する局面では累進配当を掲げる銘柄のほうが下値の耐性が強い可能性は認識しています。私が住友商事を選んだのは配当方針を比較した結果ではなく、単に取得当時に割安だったからで、そこは運の要素が大きかったと考えています。

累進配当は減配履歴と配当性向で確かめる

三菱商事は11期連続で減配がなく、配当は株式分割調整後で16.7円から110円まで6.6倍になりました。住友商事には2021年3月期に20.0円から17.5円への減配があり、「商社株なら累進配当」とは言えません。一方で配当性向は三菱商事59.6%、住友商事32.1%で、利益に対する配当の重さは三菱商事のほうが大きくなっています。

累進配当を評価するときは、方針の有無だけでなく、実際の減配履歴と配当性向の水準を必ず併せて確認することをおすすめします。

商社株と配当に関する当サイトの記録

累進配当を掲げるのは商社だけではありません。半導体からの例としてキオクシアの累進配当も見ています。

本記事は公開情報および運営者自身の保有データに基づく個人的な整理であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。詳細は免責事項をご確認ください。

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